有給休暇の取得は労働者の権利です。しかし、現実の社会では、会社の事情によって休みを取れずに時間が過ぎてしまうこともあるでしょう。その際に、社長や上司が有給を買い取るという裏技のような手法を採用している企業も存在します。
とはいえ、いざ有給消化と有給買取を選ばざるを得ない状況になったときに、どちらを選択するのがメリットとして大きいのでしょうか?
この記事では、「有給消化と有給買取はどっちが得なのか?」という疑問について考察しています。加えて、「有給を1000円や日給の6割を買い取ってもらうのは法律的に問題ないのか?」というトピックについても詳述しているので、両者の性質を把握したい人たちは参考にしてみてください。
有給消化と有給買取の違い
有給消化と有給買取の違いをまず理解することから始めましょう。
有給消化は、従業員が所定の労働時間を満たすことなく、休暇を取得することを指します。この間に取得する給与は、通常の労働を行っていた場合と同じです。つまり、従業員は自由な時間を確保しながらも、給与を継続して受け取ることができます。
一方、有給買取は、企業が従業員の有給休暇を買い取り、その代わりに金銭を提供する制度です。具体的には、従業員は有給休暇を取らずに働き続け、その分の給与に加えて、有給休暇分の金銭を受け取ることができます。
有給消化と有給買取はどっちが得なのか?
さて、有給消化と有給買取はどっちが得なのでしょうか?
結論から言えば、今の自分にとって、時間とお金のどちらが価値があると判断するのかによって、答えは変わります。ここでは、具体的なケースを想定して有給休暇と有給買取の価値を考えてみましょう。
有給休暇を利用してリフレッシュしたい、家族や趣味に時間を費やしたいと考える人にとっては、有給消化が適しています。長時間働くことにストレスを感じる人、または定期的にリフレッシュが必要な人にとって、有給消化は大きな利点があると言えるでしょう。
一方、手元に即時にお金が必要で、労働による収入を増やしたいと考える人には、有給買取が良い選択となるかもしれません。たとえば、急な出費が必要な場合や、投資や貯蓄を積み立てたいと考えている人にとって、有給買取は一定の魅力があります。
しかし、ここで重要なのは、有給休暇の本来の目的は従業員の休養とリフレッシュを保障することであるという点です。したがって、有給休暇を犠牲にしてまで金銭を得ることが本当に適切なのか、慎重に考える必要があるでしょう。
有給休暇を1000円や6割で売るのは違法なのか?
有給買取については、企業と従業員間の合意により実施されることがありますが、日本の労働基準法では基本的には認められていません。これに関しては、ベリーベスト法律事務所の公式サイトでは、次のように説明されています。
有給の買い取りを積極的に認めてしまうと、会社が有給を取得させない可能性もあり、法律で定められた意図がなくなってしまいます。そのため、たとえ労働者の同意があった場合でも、有給の買い取りは原則として違法です。
ベリーベスト法律事務所『有給の買い取り請求は違法? 会社から買い取りが認められるケース』より引用(最終確認日:2023年8月3日)
しかしながら、実際の問題としては、従業員が会社を退職したり、繁忙期が続いていたりする場合は、未使用の有給休暇が買い取られています。法的には決して良いとは言えませんが、会社と社員の間に合意があるならば、問題になるとは考えづらいでしょう。
ただし、「1000円で有給休暇を買い取る」や「6割で売る」などという低価格で有給を買い上げるのは、手荒な行為と見なされるかもしれません。ましてや、従業員の気持ちを蔑ろにしている場合は、労働基準監督署へのリークにも繋がるため、不当な搾取を働くことは絶対にやめてください。
リフレッシュも大切にしよう
繰り返しになりますが、有給休暇の取得は法律で認められる権利です。したがって、その取り扱い方は、最終的に従業員に委ねられており、有給消化と有給買取の選び方は個々人の状況次第と言えます。
ただし、有給休暇が法的に確保されている意図としては、心身の健康を回復することによってゆとりある生活をサポートすることにあります。その意味では、貴重な時間を金銭に変えてしまうのが必ずしもよいとは言えないでしょう。
また、会社から有給休暇の取得を妨害されているときは新しい職場を見つけることも視野に入れて転職活動を始めるのもよいでしょう。自分で環境を変える力が身につけば、選択肢は無限に増えていきます。
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